眞願寺衆徒鈴木彰氏の歌集『犬と行く山』

投稿日:2006年3月1日

※画像(平成18年2月8日・北海道新聞より転載)をクリックすると大きく表示します。

画像をクリックすると大きく表示します。(平成18年2月8日・北海道新聞転載)

眞願寺衆徒鈴木彰氏の歌集『犬と行く山』の発刊が、2月8日付け北海道新聞地方版に紹介されていた。教職にあった頃は、山岳部の顧問として高校生らと共に山に登り、職を退きて後は、マイカーで寝泊まりしながら、柴犬『未来』と、道内外の山を楽しんだという。

また、六十路の半ば中央佛教学院在籍の頃、配偶者に先立たれ、深いご縁のなか住職に導かれ、眞願寺衆徒となられた。ご門徒の皆様にも助けられて、報恩感謝の日々をおくり現在にいたっている。

歌集には犬と登った山の歌が多くを占めているが、僧侶としての身辺を詠んだ歌もあり、そんな歌の幾つかを、あわせて抄出してみたい。

鐘楼に立ちゐて瞬時よぎるもの我が葬送の鐘撞くは誰
自らに生死出づべき道を問ひ葬場に読む白骨の章
農繁期の黙契といふ盆詣り留守の佛間に経を詠みゆく
切箸に朱蝋の灯心落しゆき火壺に消ゆるを音に確かむ
わが死なば人らは言ふか犬連れし老いと合はぬが久しくなりぬと
雪片のときに入り陽に輝る見つつ緩斜面の径身を屈め行く
引き綱を胴に結はへて犬と行くかんじき着けて新雪の道を
怯む犬ときには抱へ徒渡り雨の斜里岳下りたりしよ
北の空に白鳥の群れ消えゆけり家族のあまたありし日遠く
横たはる犬の記憶にありたるや共に登りし夏の利尻の
横たはる犬と並びて部屋隅に周平を読みてひと日暮れたり
老い犬は入るべき家の門さへも通り過ぎゆく声かけざれば

※画像をクリックすると大きく表示します。(平成18年2月8日・北海道新聞より転載)