歎異抄の話

投稿日:2002年9月1日

「歎異抄の話」という本を御紹介します。

著者は龍谷大学教授・行願寺住職、普賢晃寿氏です。

100ページにも充たない小冊子ではありますが、充実した内容、何よりも分かりやすく、説得力のある著書であります。歎異抄関係の著作には多くのものがありますが、先ずはこの本を手にとって読んでみてはいかがでしょうか。2冊目を読みたくなること必定です。

歎異抄は、日本人の書いた世界に誇り得る宗教書のひとつであり、隠れたベストセラーであるとも言われます。しかし、蓮如上人は「宿善のない人に、この本を読ませてはならない」と申され、長く禁止の書、禁書でありました。常識的に仏教を理解している人に誤解されやすい言葉、例えば第3章の「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」とか第5章「父母の孝養のためとして念仏申したことなし」というような、逆説的な言葉、大胆で衝撃的、難しい内容が含まれているからだと思います。人間苦(悲しみ)を通してでないと、いただくことのできぬ聖教でもあると申しておる人もおります。

歎異抄が書かれた目的は、はびこる異義・異安心を歎き、悲しみ、この人々が誤りに気づき、正しい信心の道に帰してくれるようにとの、門弟唯園の願いから書かれたものであります。

その構成は前半10章が聖人の語った言葉の記録(語録)、後半8章は異義を嘆き、一々批判を加える(異義批判)、全18章からなっております。日常会話の中で、直接に聞いた門弟が書いたものだけに、人間味のあふれる聖人のナマの信仰生活が躍動しております。歎異抄は東洋の聖書であるとも言われます。是非とも歎異抄入門の書として「歎異抄の話」をお読みいただきたく、お奨めいたします。