平成15年に行なわれた開教当時の史実調査の折、当眞願寺旧本尊の阿弥陀如来像の足ほぞ(注1)の右に「康雲拝見(注2)」の墨書銘、左に「●(注3)」の墨印が確認されました。
浄土真宗では、末寺が任意に阿弥陀如来像を安置することはできず、これらについては一定の手順によって、本山より下付を受けなければなりません。
本願寺本山佛師の「康雲」につきましては、まだまだ不明な点が多く、今後のさらなる調査研究が待たれるわけでありますが、代々「こううん」を名乗り、ほぼ江戸時代全般にわたって、佛像製作を担当していたことが知られております。
如来像は蓮華座の上に、やや前傾気味に立ち、像高49.8センチ、構造はヒノキ材の寄木造りで、玉眼を嵌入、表面の仕上げは、肉身部が金泥、衣部が漆箔をほどこし、こちらを見詰めております。古く江戸時代の製作であることは間違いありません。
掌を合わせれば、しみじみと125年前の本寺創建の頃が思い偲ばれてなりません。この後もまた、この寺の続くかぎり、私たち門信徒をお見守り下さい。
現在は第1納骨堂正面に御安置されております。
[注1]木を組み合わせるとき、一方の端を削って、他の穴に入れる突出部のこと。蓮華座に穴をあけ、像の突起の部分を差し入れて接合する。「ほぞ」の漢字は右の文字です
[注2]墨書銘については「康雲拝見」とありますが、明治初期の本道の教線拡大にあたり、佛像の新造が、何らかの理由により不可能となり、以前からあった像が本山の要請に応じて、像の吟味鑑定がなされ、その際の署名が「拝見」ではなかろうか。
これはあくまでも推察であり、確かなことではありません。
[注3]●の部分には右の文字が入ります