今回は「四季おりおり 和讃に学ぶ」寺川幽芳著をご紹介いたします。
著者あとがきに「…まず何よりも親鸞聖人が系統立てて書かれた和讃を、こうしたつまみ食いのような形で取り上げてよいのだろうか…ということがありました。私は現在でも、このことにこだわりをもっているのですが…」とありますが、聖人が仏徳を讃嘆する同一の目的と意識をもって、総計542首という古今無類の一大作品の中から65首のみ本書への掲載が、著者にそう言わせているのかもしれません。
また「…聖人が誰にでもわかりやすくと願って詠まれた和讃だから、そう堅苦しく考えなくてもゆるしてもらえるだろうと、勝手に言い訳を自分にしながら…」とも記しておりますが、和讃は和語(日本語)で書かれた仏教讃歌ともいうべきものであります。阿弥陀仏のご本願のみ教えを私たちにも分かる平易な言葉でお示しになり、ともに仏徳を讃仰することを、お勧め下さっておるのです。
いうまでもなく、親鸞聖人の主著は、漢文で書かれた「教行信証」であり、それは立教の根本聖典という意味で「ご本典」と尊称されておりますが、和讃は「和語のご本典」といわれる所以であります。
本書は「単なる和讃の解説ではなく、四季おりおりの風物や社会の出来事にちなんで現代に生きる者の一人として率直に感じたことや考えるところを、和讃に学びつつ記す」と書かれておりますが、毎日一首ずつ和讃にこめられたお心を、よく味わって読み進む、そんな座右の書としての読み方をお勧めしたい一本でもあります。