私たち道民は、アイヌの人々を除いては、すべて本州からの移住者と、その子孫であります。移住の姿は、さまざまな形ではありますが、決して安楽なものではなかったことだけは確かな事実であります。苦痛と悲嘆のなかで、切実に人々が求めたものは、快楽などではなく、神佛ではなかっただろうかと思うのであります。
そんな人々の心のよりどころとなる寺が、どのようにして各地に建てられていったのか。素朴な疑問に答えてくれるのが、本書ではないかと思います。本道への佛教の伝播と、その展開の歴史を、本格的通史としてまとめた意欲作であります。著者はあとがきで、こう記しております。言うなれば本書は「道民の信仰の軌跡」であると…
本書は「中世佛教の伝播」「近世佛教の成立と展開」「近現代佛教の展開」という3部から構成され、分厚い読み応えのある書物であります。
中世・近世の記述は松前・函館等道南地域の主となることは勿論でありますが、近現代については、私たちの住む道央地域の詳述とか、アイヌ民族の改宗に関する内容などに、物足りなさを感じさせました。
ともあれ本道の佛教史に関心を抱かれる方々の必読の書であることを強調して、本書の紹介といたします。
なお、図書室では、佛教書はもちろん、童話全集、絵本、佛教マンガ、文学全集等々取り揃えて、皆様の御来室をお待ちいたしております。またこんな本をそろえてほしいというご要望がございましたら、是非お寺まで声をかけて下さい。